2025.07.28
日本の伝統衣装である着物には種類がいくつもあり、用途によって選び方が変わってきます。装うシーンや装う場の格なども考えた上で、相応しい着物を選ぶのが良いのですが、正直どの着物を選べばよいのか良く分からないという方もいらっしゃることでしょう。
本記事では、TPOに合わせた着物の選び方を詳しく解説していくので、ぜひ参考にしてみ下さい。
着物は「格式(フォーマル度)」によって分類され、それぞれにふさわしい種類があります。礼装と呼ばれるものにも第一礼装と準礼装があり、それぞれ装う場が異なります。ここでは、まずどんな種類の着物があるのか見ていきましょう。
和装における外出着とは、ちょっとしたおしゃれをして出掛けたい場面にふさわしい着物のことを指します。友人とのお食事会、観劇、美術館巡りなど、普段着よりもワンランク上だけれど、そこまでフォーマルな雰囲気が出ない着物を選ぶときに、外出着というくくりの着物を選ぶのがおすすめです。
「外出着」は明確な定義があるわけではありませんが、TPOに応じてカジュアル~略礼装の範囲で選ばれることが多いです。
よりフォーマル寄りな着物を選ぶのであれば、付け下げや色無地、付け下げ訪問着などが良いでしょう。
逆に、カジュアル寄りな着物を選ぶのであれば、大島紬や結城紬など紬の中でも有名なものや、小紋の中でも格が高いとされる江戸小紋などがおすすめです。合わせる帯は、名古屋帯や半幅帯などを選び、軽やかに装うのが素敵ですよ。
和装で言うところの普段着とは、生地が丈夫で家事などの労働にも向いている着物を言います。いわゆるカジュアルな和装とされる紬や小紋、浴衣などがそれに該当し、普段着使いはもちろん、ちょっとしたお稽古事の際にもおすすめです。
普段着に区分される着物はどんなに色柄が素敵であってもフォーマルな着物の格には及びません。正式な場や華やかな場で装うには相応しくないので、気を付けましょう。
礼装の中でも第一礼装や最礼装と言われる和装の装束は、もっとも格が高いものとして扱われます。主に冠婚葬祭の際に用いられ、人生の節目の大事な行事で装われることが多い着物になります。
打掛は、今では花嫁衣裳としてしか目にすることがなくなりましたが、武家女性の正装であった時もありました。大奥では特に色柄に対する厳しい規定があったそうで、他にも花嫁衣裳の白打掛と遊女の打掛ははっきりとした区別を設けるなど、かつては打掛にも様々種類があったとされています。
現在、花嫁衣装に用いられる打掛には鳳凰や鶴、桐、松などのおめでたい文様が紋綸子地に刺繍されたり、染められたりしており、大変豪華なものとなっています。まさしく、和装の最礼装と呼ばれるに相応しい華やかさがあるのです。
既婚女性・ミセスの第一礼装として知られる黒留袖は、新郎新婦の母親や仲人夫人、親族の既婚女性が着る正装の着物になります。染め抜きの日向五つ紋を付け、格式高い着物として装います。
未婚女性・ミスの第一礼装として知られる振袖は、未婚の女性のみがフォーマルな場で装える着物となっています。新郎新婦の親族の未婚女性をはじめ、友人の方でも未婚ならば披露宴で振袖を装うことができます。
また、振袖は成人式の衣裳としても定着しており、成人をお祝いするにあたり振袖を着る方は多いです。
振袖には大振袖・中振袖・小振袖の3種類があり、大振袖は花嫁衣裳として用いられる格の高い着物です。
和装の喪の装いは、第一礼装の格のもの、準礼装の格のもの、略礼装の格のものに分けることができます。どの装いをするかは、故人との関係、また弔事の種類によっても変わってきます。
葬儀や告別式の時などは、年齢問わず喪主や親族は五つ紋付きの黒喪服に黒無地帯を着ます。通夜の一般弔問客は準礼装で控えめに装うのが良いとされています。
ちなみに、五つ紋付きの黒喪服に黒の帯を合わせると正礼装になりますが、五つ紋付きの黒喪服に色喪帯を締めることで格を落とすことができ、準礼装の着こなしとすることができるのです。
また、偲ぶ会や法事には準礼装か略礼装で出席するのが望ましいです。紫地の江戸小紋に一つ紋付きの羽織、色喪帯を合わせた略礼装などは法事にもぴったりな装いになります。
和装の世界では、正礼装の次に格が高いのが準礼装のもの、さらに下の格が略礼装の着物としていますが、最近では準礼装と略礼装の境界線は曖昧になってきており、昔ほどその差は気にされなくなりつつあります。
しかし、年配の方などは着物の格をよく把握している場合があるので、知っておいた方が安心でしょう。
色留袖は、裾だけに模様が入り、紋の数によって礼装の格が変わる着物です。模様は前後にまたがる絵羽模様で、上品で落ち着いた印象があり、年齢を問わず着用できます。
また、五つ紋付きのものは黒留袖と同格の着物、つまり正礼装着物として扱われます。年齢に関係なく着ることができ、未婚女性でも装えます。紋の数を減らすことで色留袖の格を下げることができるので、着用シーンも広がりが出るのです。色留袖を沢山着たいということであれば、一つ紋もしくは三つ紋に紋数を留めると良いでしょう。
訪問着は、肩から袖、裾にかけて模様が切れ目なく続く絵羽模様の着物で、華やかな印象が魅力です。未婚や既婚に関係なく着ることができるセミフォーマルの着物になります。訪問着の文様の華やかさや合わせる帯の格にもよりますが、フォーマルな場からちょっとしたお出掛けシーンまで様々な場面で活躍してくれる着物です。
かつては紋を入れて装うのが正式とされていましたが、今では紋を入れずに装う方の方が多くなりました。結婚式などにお呼ばれして訪問着を装う際には、できるだけ格の高い柄や文様の入った訪問着で、合わせる帯は西陣織などの豪華なものを選ぶようにするのがおすすめです。
付け下げは訪問着よりもより気軽に装える着物で、どちらかというと略礼装に分類されることが多い着物になります。未婚・既婚問わず装うことができます。
訪問着に比べると文様が少なく、少々地味な印象もある着物ですが、茶人には大変好まれる着物です。また、訪問着は、模様に切れ目がない絵羽模様に対し、付け下げは柄がつながることがほぼありません。
合わせる帯や帯締め次第で雰囲気が随分と変わる着物なので、一枚あると重宝します。
色無地は紋が入っているか否かで格が変わり、紋入りのものはセミフォーマルな着物として装うことができます。特に三つ紋入りの色無地は訪問着よりも格が高い着物になるので、式典の付き添いや格の高い場での装いに最適です。
色無地の着物は年齢問わず着られる着物で、かつ合わせる帯によって全く違った雰囲気を楽しめる着物となっています。あまり派手な着物はちょっとという方は、色無地を活用してみて下さい。
カジュアルな着物として重宝するのは小紋や紬、そして浴衣になります。名古屋帯や半幅帯を合わせて軽やかに装えるという手軽さは他の着物では味わえません。
小紋は、洋装で例えるならば「プリント柄のワンピース」のような存在で、比較的カジュアルな場面で着用される着物です。
軽やかに装うことができる着物だからこそ、習い事やちょっとそこまでの買い物などで大変重宝します。
ただし、小紋のすべてがカジュアル着というわけではありません。江戸時代の裃(かみしも)から発展した「江戸小紋」と呼ばれる種類には、細かい柄の鮫小紋・角通し・行儀などがあり、これらは一つ紋を入れることで略礼装や準礼装として装うことが可能です。
そのため、江戸小紋は茶席や改まった場への付き添い、式典などにも対応できる、応用範囲の広い着物といえます。
紬はもともと、養蚕農家がくず繭から糸を紡いで、自家用に織ったものが始まりです。今では、その技術の高さから伝統的工芸品に指定されているものも多くあり、作家ものの紬、大島紬、結城紬などの上等な紬はよそゆき用として着ることができます。
カジュアルな着物でありながら、種類によっては略礼装や準礼装の着物としても着ることができるのだということは覚えておくと良いでしょう。
ただし、結婚披露宴や格式の高い式典には向かないため、避けるのが無難です。
夏祭りの定番着物といえば浴衣なのではないでしょうか。木綿素材が暑い夏にも嬉しい浴衣は普段着の代表格と言えるでしょう。
元々家着として、ホームウェアやパジャマとしての役割を担っていたものなので、小紋や紬よりもより軽やかに装えるのを特徴としています。長襦袢や足袋を付けずに装うことができ、帯も半幅帯や簡単に結べる兵児帯と合わせます。
近年は少しランクの高いよそゆき浴衣(絹素材)というのも登場してきました。合わせる帯も半幅よりは名古屋帯の方が良く、帯の格で着物のトータルコーデの格も高めることができます。
しかし、よそゆき浴衣はカジュアルの中でもおしゃれ着として着用されますが、フォーマルな場には着ていかないほうが良いでしょう。
着物は季節に合わせた着物の選び方も大切。季節ごとの着物の種類について見ていきましょう。
袷は表地に裏地を縫い合わせた着物のことを言い、透け感が全くありません。和装の中でももっとも長い期間着られる着物で、一般的には10月から翌5月ぐらいまでの7か月間ほど袷の着物を着ます。
ただし、昨今の異常気象で5月も袷は暑すぎることがあります。そんな時には無理に袷を着るのではなく、適宜単衣などを用いながら暑さ対策するようにして下さい。
単衣は裏地を付けない着物のことを言い、主に6月(夏単衣)と9月(秋単衣)に着られます。ちなみに、ウール地の着物は、生地素材がそもそも厚手ということもあり、裏地を付けずに単衣仕立てにすることが多いです。
単衣の着物も袷の着物同様、フォーマル、セミフォーマル、カジュアルのランクの着物があります。装う場面に応じて着物の格を見極めるようにすると良いでしょう。
薄物とは、絽(ろ)、紗(しゃ)、羅(ら)など、透ける風合いの薄い生地の着物の総称になります。薄物は主に盛夏の7月末から8月いっぱい着られる着物ですが、9月でもまだまだ30度を超える日々が続く場合は薄物でやり過ごすこともあります。
薄物も袷や単衣の着物同様、フォーマルからカジュアルまでのランクの着物があります。装うシーンに応じて適切な着物を選び、涼やかに装うのが良いでしょう。
着物の種類について簡単にまとめてきましたが、いかがでしたでしょうか。着物を装う際には、どんな場所で、なんのために、何時装うのかをしっかり把握することが大切です。着物にはTPOを大切にする文化があります。装いの基本を知っておくと、より安心して楽しめるでしょう。
フォーマルなシーンでは、それなりの重鎮も列席している可能性が高いので、着物のルールをしっかり分かった着こなしを心掛ける必要があるのです。
着物のルールをしっかり把握したら、あとは季節感を装いに取り入れ、自分なりの和装を楽しむのが良いでしょう。和装の種類や着るシーンがよく分からなくなってしまったという時には、ここの記事に戻り、確認してみて下さいね。
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着物の種類や格とは?TPOに合わせて選べるように詳しく解説します!
日本の伝統衣装である着物には種類がいくつもあり、用途によって選び方が変わってきます。装うシーンや装う場の格なども考えた上で、相応しい着物を選ぶのが良いのですが、正直どの着物を選べばよいのか良く分からないという方もいらっしゃることでしょう。
本記事では、TPOに合わせた着物の選び方を詳しく解説していくので、ぜひ参考にしてみ下さい。
目次
着物の種類一覧
着物は「格式(フォーマル度)」によって分類され、それぞれにふさわしい種類があります。礼装と呼ばれるものにも第一礼装と準礼装があり、それぞれ装う場が異なります。
ここでは、まずどんな種類の着物があるのか見ていきましょう。
紋の数で格が変わる
江戸小紋などは準礼装
大島紬などは準礼装として着られる場合もある
よそゆき浴衣もある
外出着とは
和装における外出着とは、ちょっとしたおしゃれをして出掛けたい場面にふさわしい着物のことを指します。
友人とのお食事会、観劇、美術館巡りなど、普段着よりもワンランク上だけれど、そこまでフォーマルな雰囲気が出ない着物を選ぶときに、外出着というくくりの着物を選ぶのがおすすめです。
「外出着」は明確な定義があるわけではありませんが、TPOに応じてカジュアル~略礼装の範囲で選ばれることが多いです。
よりフォーマル寄りな着物を選ぶのであれば、付け下げや色無地、付け下げ訪問着などが良いでしょう。
逆に、カジュアル寄りな着物を選ぶのであれば、大島紬や結城紬など紬の中でも有名なものや、小紋の中でも格が高いとされる江戸小紋などがおすすめです。
合わせる帯は、名古屋帯や半幅帯などを選び、軽やかに装うのが素敵ですよ。
普段着とは
和装で言うところの普段着とは、生地が丈夫で家事などの労働にも向いている着物を言います。
いわゆるカジュアルな和装とされる紬や小紋、浴衣などがそれに該当し、普段着使いはもちろん、ちょっとしたお稽古事の際にもおすすめです。
普段着に区分される着物はどんなに色柄が素敵であってもフォーマルな着物の格には及びません。正式な場や華やかな場で装うには相応しくないので、気を付けましょう。
礼装(第一礼装)の種類
礼装の中でも第一礼装や最礼装と言われる和装の装束は、もっとも格が高いものとして扱われます。
主に冠婚葬祭の際に用いられ、人生の節目の大事な行事で装われることが多い着物になります。
打掛
打掛は、今では花嫁衣裳としてしか目にすることがなくなりましたが、武家女性の正装であった時もありました。
大奥では特に色柄に対する厳しい規定があったそうで、他にも花嫁衣裳の白打掛と遊女の打掛ははっきりとした区別を設けるなど、かつては打掛にも様々種類があったとされています。
現在、花嫁衣装に用いられる打掛には鳳凰や鶴、桐、松などのおめでたい文様が紋綸子地に刺繍されたり、染められたりしており、大変豪華なものとなっています。まさしく、和装の最礼装と呼ばれるに相応しい華やかさがあるのです。
黒留袖
既婚女性・ミセスの第一礼装として知られる黒留袖は、新郎新婦の母親や仲人夫人、親族の既婚女性が着る正装の着物になります。
染め抜きの日向五つ紋を付け、格式高い着物として装います。
振袖
未婚女性・ミスの第一礼装として知られる振袖は、未婚の女性のみがフォーマルな場で装える着物となっています。
新郎新婦の親族の未婚女性をはじめ、友人の方でも未婚ならば披露宴で振袖を装うことができます。
また、振袖は成人式の衣裳としても定着しており、成人をお祝いするにあたり振袖を着る方は多いです。
振袖には大振袖・中振袖・小振袖の3種類があり、大振袖は花嫁衣裳として用いられる格の高い着物です。
喪服
和装の喪の装いは、第一礼装の格のもの、準礼装の格のもの、略礼装の格のものに分けることができます。どの装いをするかは、故人との関係、また弔事の種類によっても変わってきます。
葬儀や告別式の時などは、年齢問わず喪主や親族は五つ紋付きの黒喪服に黒無地帯を着ます。
通夜の一般弔問客は準礼装で控えめに装うのが良いとされています。
ちなみに、五つ紋付きの黒喪服に黒の帯を合わせると正礼装になりますが、五つ紋付きの黒喪服に色喪帯を締めることで格を落とすことができ、準礼装の着こなしとすることができるのです。
また、偲ぶ会や法事には準礼装か略礼装で出席するのが望ましいです。紫地の江戸小紋に一つ紋付きの羽織、色喪帯を合わせた略礼装などは法事にもぴったりな装いになります。
準礼装(略式礼装)の種類
和装の世界では、正礼装の次に格が高いのが準礼装のもの、さらに下の格が略礼装の着物としていますが、最近では準礼装と略礼装の境界線は曖昧になってきており、昔ほどその差は気にされなくなりつつあります。
しかし、年配の方などは着物の格をよく把握している場合があるので、知っておいた方が安心でしょう。
色留袖
色留袖は、裾だけに模様が入り、紋の数によって礼装の格が変わる着物です。模様は前後にまたがる絵羽模様で、上品で落ち着いた印象があり、年齢を問わず着用できます。
また、五つ紋付きのものは黒留袖と同格の着物、つまり正礼装着物として扱われます。年齢に関係なく着ることができ、未婚女性でも装えます。
紋の数を減らすことで色留袖の格を下げることができるので、着用シーンも広がりが出るのです。色留袖を沢山着たいということであれば、一つ紋もしくは三つ紋に紋数を留めると良いでしょう。
訪問着
訪問着は、肩から袖、裾にかけて模様が切れ目なく続く絵羽模様の着物で、華やかな印象が魅力です。未婚や既婚に関係なく着ることができるセミフォーマルの着物になります。
訪問着の文様の華やかさや合わせる帯の格にもよりますが、フォーマルな場からちょっとしたお出掛けシーンまで様々な場面で活躍してくれる着物です。
かつては紋を入れて装うのが正式とされていましたが、今では紋を入れずに装う方の方が多くなりました。
結婚式などにお呼ばれして訪問着を装う際には、できるだけ格の高い柄や文様の入った訪問着で、合わせる帯は西陣織などの豪華なものを選ぶようにするのがおすすめです。
付け下げ
付け下げは訪問着よりもより気軽に装える着物で、どちらかというと略礼装に分類されることが多い着物になります。
未婚・既婚問わず装うことができます。
訪問着に比べると文様が少なく、少々地味な印象もある着物ですが、茶人には大変好まれる着物です。また、訪問着は、模様に切れ目がない絵羽模様に対し、付け下げは柄がつながることがほぼありません。
合わせる帯や帯締め次第で雰囲気が随分と変わる着物なので、一枚あると重宝します。
色無地
色無地は紋が入っているか否かで格が変わり、紋入りのものはセミフォーマルな着物として装うことができます。
特に三つ紋入りの色無地は訪問着よりも格が高い着物になるので、式典の付き添いや格の高い場での装いに最適です。
色無地の着物は年齢問わず着られる着物で、かつ合わせる帯によって全く違った雰囲気を楽しめる着物となっています。あまり派手な着物はちょっとという方は、色無地を活用してみて下さい。
普段着の種類
カジュアルな着物として重宝するのは小紋や紬、そして浴衣になります。
名古屋帯や半幅帯を合わせて軽やかに装えるという手軽さは他の着物では味わえません。
小紋
小紋は、洋装で例えるならば「プリント柄のワンピース」のような存在で、比較的カジュアルな場面で着用される着物です。
軽やかに装うことができる着物だからこそ、習い事やちょっとそこまでの買い物などで大変重宝します。
ただし、小紋のすべてがカジュアル着というわけではありません。
江戸時代の裃(かみしも)から発展した「江戸小紋」と呼ばれる種類には、細かい柄の鮫小紋・角通し・行儀などがあり、これらは一つ紋を入れることで略礼装や準礼装として装うことが可能です。
そのため、江戸小紋は茶席や改まった場への付き添い、式典などにも対応できる、応用範囲の広い着物といえます。
紬(つむぎ)
紬はもともと、養蚕農家がくず繭から糸を紡いで、自家用に織ったものが始まりです。
今では、その技術の高さから伝統的工芸品に指定されているものも多くあり、作家ものの紬、大島紬、結城紬などの上等な紬はよそゆき用として着ることができます。
カジュアルな着物でありながら、種類によっては略礼装や準礼装の着物としても着ることができるのだということは覚えておくと良いでしょう。
ただし、結婚披露宴や格式の高い式典には向かないため、避けるのが無難です。
浴衣
夏祭りの定番着物といえば浴衣なのではないでしょうか。
木綿素材が暑い夏にも嬉しい浴衣は普段着の代表格と言えるでしょう。
元々家着として、ホームウェアやパジャマとしての役割を担っていたものなので、小紋や紬よりもより軽やかに装えるのを特徴としています。
長襦袢や足袋を付けずに装うことができ、帯も半幅帯や簡単に結べる兵児帯と合わせます。
近年は少しランクの高いよそゆき浴衣(絹素材)というのも登場してきました。
合わせる帯も半幅よりは名古屋帯の方が良く、帯の格で着物のトータルコーデの格も高めることができます。
しかし、よそゆき浴衣はカジュアルの中でもおしゃれ着として着用されますが、フォーマルな場には着ていかないほうが良いでしょう。
季節によって変わる着物の種類
着物は季節に合わせた着物の選び方も大切。
季節ごとの着物の種類について見ていきましょう。
袷(あわせ)
袷は表地に裏地を縫い合わせた着物のことを言い、透け感が全くありません。
和装の中でももっとも長い期間着られる着物で、一般的には10月から翌5月ぐらいまでの7か月間ほど袷の着物を着ます。
ただし、昨今の異常気象で5月も袷は暑すぎることがあります。そんな時には無理に袷を着るのではなく、適宜単衣などを用いながら暑さ対策するようにして下さい。
単衣(ひとえ)
単衣は裏地を付けない着物のことを言い、主に6月(夏単衣)と9月(秋単衣)に着られます。ちなみに、ウール地の着物は、生地素材がそもそも厚手ということもあり、裏地を付けずに単衣仕立てにすることが多いです。
単衣の着物も袷の着物同様、フォーマル、セミフォーマル、カジュアルのランクの着物があります。
装う場面に応じて着物の格を見極めるようにすると良いでしょう。
薄物(うすもの)
薄物とは、絽(ろ)、紗(しゃ)、羅(ら)など、透ける風合いの薄い生地の着物の総称になります。
薄物は主に盛夏の7月末から8月いっぱい着られる着物ですが、9月でもまだまだ30度を超える日々が続く場合は薄物でやり過ごすこともあります。
薄物も袷や単衣の着物同様、フォーマルからカジュアルまでのランクの着物があります。装うシーンに応じて適切な着物を選び、涼やかに装うのが良いでしょう。
まとめ|TPOに合った着物を選ぼう
着物の種類について簡単にまとめてきましたが、いかがでしたでしょうか。
着物を装う際には、どんな場所で、なんのために、何時装うのかをしっかり把握することが大切です。着物にはTPOを大切にする文化があります。装いの基本を知っておくと、より安心して楽しめるでしょう。
フォーマルなシーンでは、それなりの重鎮も列席している可能性が高いので、着物のルールをしっかり分かった着こなしを心掛ける必要があるのです。
着物のルールをしっかり把握したら、あとは季節感を装いに取り入れ、自分なりの和装を楽しむのが良いでしょう。
和装の種類や着るシーンがよく分からなくなってしまったという時には、ここの記事に戻り、確認してみて下さいね。